日本海岸林学会

Japanese Society of Coastal Forest

各地の海岸林

宮城県

宮城県

長浜海岸

場所: 宮城県石巻市
全長: 約1.3km
面積:
保安林区分: 飛砂防備保安林,防風保安林,潮害防備保安林
主要構成樹種: アカマツ,クロマツ
被災前の状況:

旧北上川河口と万石浦にはさまれた石巻湾の東側に位置し、ほぼ東西方向に延びている砂浜海岸であり、奥行きは100~200mとなっている。砂浜地の西端部と海岸林の前部には海浜公園や海水浴場がある。さらに延長距離約約2㎞の防潮堤が設置され、その背後に海岸林がある。

東日本大震災による被災状況:

東日本大震災では石巻で震度5強を観測し、その後最大波高8.6m(石巻市鮎川)の津波に襲われた。津波による海岸林の被害をみてみると、前縁部には損壊した防潮堤や防潮堤背後の道路資材が津波によって入り込み、それらのコンクリートなどの塊は比較的小径の林縁木を押し倒したが、比較的大径木は樹皮に傷はついたが、折れたり倒れたりするものはなかった。また、林縁の樹木間隔が空いている部分では自転車などの漂流物が林内に入り込んでいた。

加えて、海岸林前部にあった渡波海水浴場は震災によって砂浜が大幅に浸水される等の影響で平成23(2011)年から現在まで営業を停止しており、渡波中学校や石巻商業高校、石巻女子高校、石巻女子商業高校(現在は石巻女子高校と石巻女子商業高校が統合し、桜坂高校)が高台移転した。

写真:宮城県石巻市 震災後(提供者:岡田穣氏)
写真:宮城県石巻市 震災後(提供者:岡田穣氏)
参考文献:

名取市閖上浜

場所: 宮城県名取市閖上浜
全長:
面積:
保安林区分:
主要構成樹種: クロマツ
被災前の状況:

名取市は仙台市の南東に隣接し、名取川・阿武隈川の両水系に囲まれた肥沃な大地が広がり、気候も東北地方としては温暖なことから、古くから農耕が盛んな自然条件に恵まれた住環境に適した土地柄であった。閖上浜は名取川河口にある海浜の名称で、川をはさんだ北側は仙台市となる。

名取市を含む宮城県南部沿岸域は、400年前の伊達政宗公の治世の時代に農地開墾されるのにあわせ、遠州(現 静岡県浜松市)から苗を取り寄せ、海岸林を造成した。

東日本大震災による被災状況:

名取市は東日本大震災時に震度6強(名取市増田)を記録した。閖上地区における津波高は7.72m(サイクルスポーツセンター付近)を記録し、津波は海岸から6キロ近くにまで達した。海岸林の被害について,残土盛土の中央部背後に位置するクロマツは津波によって100本/ha程度しか林帯後方へ流されなかったのに対し、そのほかの位置にあるクロマツは1,500本/ha以上が津波によって林帯後方に流されていた。

写真:宮城県名取市(提供者:坂本知己氏)
写真:宮城県名取市(提供者:坂本知己氏)
写真:宮城県名取市(提供者:坂本知己氏)
参考文献:
  • 東日本大震災復興海岸林再生プロジェクト,2016.11.21閲覧
  • 寺本行芳,浅野敏之,林建二郎,多田毅,今井健太郎,坂本知己(2012):2011年東北地方太平洋地震津波発生後の宮城県名取市閖上浜における海岸林被害と残土盛土による海岸林の被害軽減効果,海岸林学会誌Vol.11 No.1:11-18
  • 名取市における東日本大震災の記録,2016.12.19閲覧
  • 原口強・岩松暉(2011):東日本大震災津波詳細地図 上巻:青森・岩手・宮城,古今書院,167pp.