日本海岸林学会

Japanese Society of Coastal Forest

震災関連

海岸林の再生に向けて

「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」で記されている基本方針の概要を以下に示します。

海岸林は災害防止機能を持っていて、地域の生活環境の保全に重要な役割を果たしています。海岸防災林は津波自体を完全に抑止することはできないものの、津波被害の軽減効果がみられることから、まちづくりの観点において防御の一つとして位置付けることができます。また、東日本大震災の津波による海岸防災林の被害は、岩手・宮城・福島の各県を中心として広い範囲に及び、津波の規模や地形等により、被災状況は地域によって多様です。

以上のことから、今回の津波による被災状況を踏まえ、海岸の砂浜や砂漠の砂が風によって移動する現象・強風による被害の防備等の災害防止機能に加え、津波に対する被害軽減効果も考慮した海岸防災林の復旧・再生を検討していく必要があります。具体的には、被災箇所ごとに、被災状況や地域の実際の有様さらには地域の生態系保全の必要性等を踏まえ、維持管理を含むコストなどを合わせて海岸防災林の再生方法を決定していくことを検討する必要があります。

基本的な再生の方向性としては、林帯を再生しつつ、従来通りの規模による施設の原形復旧により必要な機能を確保すること、防潮堤等施設の改良により必要な機能を確保すること、林帯幅の確保により必要な機能を確保すること、林帯幅の確保に加えて人工盛土を作り上げることにより、必要な機能を確保することの4パターンが想定され、単独のパターンやこれらパターンの組み合わせにより海岸防災林の再生を図っていくことが必要です。

また、東北地方太平洋沖地震津波による被害を受けた地域において、マツ類と広葉樹(幅の広い葉をつける樹木の総称)からなる混合林(二種以上の樹種からなる森林)や複相林(樹齢や樹高の異なる樹木で構成され、樹木の上部の、枝・葉の茂っている部分が何層にも分かれている林)の海岸林構造が提案されています。

広葉樹は防災機能の強化、多様な森林の形成、松くい虫の被害に合わないなどのメリットがあります。マツは成長が早いので、津波の被害にあった後でも再生が早いというメリットがあります。