津波発生時における海岸林の物理的な機能としては、流れに対する抵抗として働き、海水の流れの速さを減らすこと、津波が到達する距離を減らすなどの他、以下のような効果があげられているので、過去の事例とあわせて紹介します。
津波の波力を減らして流れの速さやエネルギーを低下させ、その破壊力を弱めます。
昭和三陸津波の際、岩手県陸前高田市の高田松原で、林の中の家は床下浸水程度で大きな被害はありませんでしたが、見晴しをよくする目的で前面の林帯を切り開いた箇所は、家は跡形もなく全て壊れてしまった例があります。
林帯で波の流れをせき止め、陸地に津波が到達する時間を遅らせます。
東日本大震災において、林帯が有る場合は無い時よりも津波が到達する時間が遅いことが林野庁で発表されています。
津波によって流れてきた物の移動を樹木が阻止をして、移動によって生じる二次的災害を防止します。
東北地方太平洋沖津地による津波の侵入で周辺の多くの家屋が流失している中、立木で浮遊物が捉えられ、家屋が流失を抑えました。また南海地震の津波の際、和歌山県広川町のクロマツ林が150トンもの船の移動を阻止し、後方の中学校に衝突して破壊するのを防いだ例があります。
強風による砂丘の移動を防いで海岸に高い地形を保ち、それが津波に対する壁となり、海水の侵入を阻止します。 日本海中部地震津波の際、秋田県八竜町(現三種町)から八森町(現八峰町)滝の間の30㎞の海岸が10m前後の津波に襲われましたが、この沿岸には海岸線に平行して高さ10m前後の砂丘があり、集落は良好な津波の被害を防止するために作られた防災林に覆われた砂丘の背後にあったため、津波に直撃された集落がありませんでした。
たとえ海岸林が倒壊されたとしても、津波は少しずつ減少しています。海岸林の木の有無など、わずかな条件の違いが被害の大小にもつながり、時に生死をわけます。