海岸林を管理するという目的のために、広葉樹を伐採し、落葉によって積もったマツ葉や広葉樹の葉を処理することが必要です。50年ほど昔は、マツの落ち葉を家庭用の燃料として利用していて、マツ葉をかいて集めていましたが、電気・ガスが普及して林内に放置されるようになりました。現在は、マツの落ち葉は葉タバコ農家によって、温床と呼ばれる苗を早く育てるために苗床を作るときや、養分となる堆肥として利用されています。
しかし、近年葉タバコの生産量も減少しつつあるので、他の用途として、マツ葉を炭にさせた「松葉炭」が期待されています。これは、水質を浄化させる機能や、栽培土壌に混ぜると、土壌にとてもよいという機能があります。
海岸林は、食材も採ることができます。佐賀県唐津市の虹の松原と呼ばれる海岸林では、ほとんどの唐津市民は知っているというキノコのショウロがあります。唐津市の名物に「松露饅頭」というものがあり、材料としてショウロは使われていませんが、これはキノコのショウロに似ていることから名前が付けられました。他にも、ショウロはお吸い物にいれて食べたりします。
しかし、近年はマツ葉をかくことがおこなわれなくなり、ショウロが育ちづらくなってしまい、殆どの若い人は見たことがないといわれるほど少なくなってしまっています。そこで、昭和55(1980)年頃、キノコのショウロに関する研究が始まり、平成2年(1990)年頃に全国的に「菌根性食用きのこ栽培技術の開発」プロジェクトがおこなわれました。そして、虹の松原でも平成12(2000)年頃からショウロを再生させようと地域の協力によって活動が始まり、活動を始めて5年後にショウロの発生がみられました。ショウロを育てることによって、食材利用や、地域がひとつになって世代間のつながりなどの期待がされています。